BRIKADE バリカーデ ★東京グランギニョル★
*キャストのセリフや配役の名前など多少の間違いもあります。また聞き取れない部分のセリフは飛ばされていますがご了承ください。
音響などの題名も未明なので解れば記入することにします。
場所は廃墟になった倉庫跡である。
床全体コンクリート、天井が高く鉄骨が剥き出しになっている。
舞台アートは故三上晴子嬢と飴屋法水、
そしてグランギニョルのメンバーが時間をかけてコツコツ作り上げたものだ。
プラスチックやハリボテなどは一切使わない、コンクリートや鉄などの廃材を使い作り上げた本物のアートだ。
少し肌寒い。
前方の客には水が飛ぶのでビニールシートをかけてもらっている。
初回はビニールシートが無かったのでモロに水を浴びてしまった客も少なくはない。
私も水を浴びてしまった1人で、持って行ったテープレコーダーが濡れて壊れた。
会場が肌寒い上、水浸しでの観劇は辛いものがあったのでビニールシートが配られた時は嬉しかった。
突然、Einstürzende NeubautenのSeele Brenntの曲と共に始まる。
白衣を着た常川博行氏が曲の合間に一言づつ叫ぶ。
「君の未来!………、君の才能!………。それが秒単位でただれていく………。イフ・ネプト・マ〜イシン………、10・ミリ・グラ〜ム」
Einstürzende Neubauten_Seele Brennt
客席の一番後ろの高い位置に常川博行氏と、小さな箱の様なトロッコに石川成俊が載っている。
その箱の下にはレールがあり、客席前方の舞台(というよりコンクリートの床に、コンクリートや鉄クズでで作られた水の入った池)に繋がっている。
いきなりトロッコは物凄いスピードで落ちて行き石川成俊氏は宙を舞って池の中へ落ちる。
そこにはすでに同じ様に落とされた男達が何人もいた。
(私事だが、実はこの日、私は小型のテープレコーダーを持ち込み録音していた。もちろん席は前列の少し左寄りに座っていた。石川成俊さんがトロッコから池に落ちた時、かなり多い水しぶきが前列の客にかかった。私も結構濡れてしまい、室内が寒く観劇中ずっと手が凍えていたのを思い出 す。次からはいちばん前の客にはビニールシートを掛けてくれるようになったが、おかげでテープレコーダーがブッ壊れーションで最初の部分だけしか録音できませんでした😔)
成俊は出口を探そうとするが皆、出口は無い、探しても無駄だ、自分達もさんざん探して見つける事は出来なかったと言うがそれでも成俊は「そんなはずは無い、どこかに出口があるはずだよ」と言い探し回る。
が、「ダメだ、どこにも……どこにも……」
田口「だから言ったでしょう」
田口が池の水をすくってみる。
宗介「よしなよ、そんな水飲めやしないよ」
田口「そんなことわかってますよ。」
嶋田はその水がなぜ飲めないのか、自分の部署で扱っている薬品がここまで流れ込んでいるのだと説明する。
宗介「要するに、結局飲めないと言うことだろうが」
嶋田「ああ、そうだよ」
宗介「だったら勿体ぶるんじゃねえよ!」
田口「ちょっと待ってくださいよ!飲めるとか飲めないとか、なんかオカシイですよ。まるで、ここにいるのが当たり前みたいな!」
嶋田「田口さん、僕は第5薬品の嶋田と言います………。田口さん‼︎ 誰も当たり前なんて思っていませんよ。我々がここにこうしているという事は事実です。」と言い終わったと共に突然、上から池の中に幾つもの大きなカプセルが落ちて来る。皆「なんだ、何なんだ⁈」とうろたえるが、嶋田はカプセルを拾い上げ、中の液体に口をつける。
長い間…………嶋田、前方を見据え口を開く。「水だ!」
田口笑い出す。「そうか、そういうことか。あいつら俺たちの事をどこかで見てやがんだ。」そして皆が怒り出し叫ぶ。
「こんな水飲むもんかよー」「やめて下さい勿体ない」「冗談じゃねええー!」
突然、ノイバウテンの曲と共に、成俊だけを除いて、全員頭を抱え、激しい頭痛に苦しみ転げまわる。
そして成俊も自分も同じ苦しみが来るならいっその事、「来るなら早く、は、はやく、、はや、早く、早く、は、はや、はや、早ーーく‼︎‼︎‼︎‼︎」Einstürzende Neubauten のHalber Menschが流れる。
そして成俊も激しい頭痛の苦しみにもがき転げ暴れ叫ぶ!
Einstürzende Neubauten (Halber Mensch 1985)
再び常川博行氏の声。
「君の才能、君の未来。それが秒単位でただれている。安心したまえ、痛みは無い。イフ・ネプト・マーイシン、10ミリ・グラーム」
そして突然、最初の成俊と同様に上野が落ちて来る。
上野は知り合いの棚橋が倒れているのを見つける。
「おい!棚橋!シッカリしてくれよ。おい起きろよ。棚橋、シッカリしろよ!」
棚橋目を覚ます。
「う、上野? うわー!オレ、生きてる、生きてるよ!」
上野「おい、何があったんだよ。」
棚橋「お、オレ、落ちてきて、出口なくて、水が落ちてきて、そしたらみんなが、頭が頭が割れそうで、俺がXXXになって、XXXになって、XXXXX、ちきしょう、ちきしょう、ちきしょうー‼︎」
上野「何があったのかサッパリわかんねー」
棚橋「あの薬のせいだと思うんだ」
上野「なにそれ」
棚橋「ほら、イフネプト何とかっていうやつだよ、お前もあいつらに落とされてここに来たんだろう?注射打たれただろ?」
上野「いや」棚橋「みんなされたんだぜ」
上野「いや、そんなこと言ったって、あ!アレだ!オレって脳が少しバカになってるだろ?こいつに薬打ったって効かないんじゃないのなんて思ったんじゃないの?ははははは」
徐々に周りが目を覚まし始める。
棚橋「おい、しっかりしろ、おい!おい!」田口が目を覚ます。
田口「今のはなんだったんだろう。おれ、脳みそがどうかしちゃって、吹っ飛んじまったぜ。」
「やっぱりオレ達、ラットにされてんだよ。」
棚橋「この人達も起こした方がいいかな」「どっちだっていいさ」
棚橋「一応起こすよ、おい起きろよ」そして、皆が目を覚まし新入りに気づく。
棚橋「こいつ、俺の同僚で上野って言うんだよ。だからこいつもここに捨てられて…」
上野「あのー話聞いてて思ったんですけどお〜、僕がここに落とされたのは〜頭がポンコツだからと思うんですよね。だからポンコツだから捨てられてもしょうがないかななんて」
宗介「なんだコノヤロ」
上野「ポンコツにはこういう所が向いてると会社側はこう判断したわけですよ。そう思ってみると、ここもなかなか良いところじゃ無いかな〜なんて」
田口「あんた何言ってんだよ」
上野「だって出られないんでしょう?それに水くれるらしいし、だったら仕事してるよりここにいる方がいいな」
田口「あんたね、あんたまだ頭痛来てないからそういうこと言えるんですよ」
棚橋「そのことだけどね、だから…こいつだけ、こいつだけ薬打たれて…ない…みたいなんだけど…」
石川「おい、こいつ会社の回しもんなんじゃないか⁉︎」
棚橋「そんなことないよ!バカなだけだよ!」
上野「ちょっと聞いてよ。いい?あのねオレ、廃墟に住みついた人の話聞いたことあるんだ。
廃墟って野生動物みたく草の根っことか幼虫とか食べて暮らしてるんだってさ。なんか原始と未来との融合とか言っちゃってさ、鉄の錆びとか、粉々になったコンクリートとか食べたりしてるんだってさ。だからオレ達もここに住めると思うんだよね。ほら、これなんかシャブったら美味しそうじゃない。ハハハハハハハハ」
(注・上野仁は実際もこういったアートが好きで、アインシュツルツェンデノイバウテンの熱狂的なファンでした)
嶋田「本当のバカですね」
上野「ここだってさ、居心地良さそうな所じゃない、棚橋だってそう思うだろ?」
棚橋「…そうかもしれない……」
嶋田「ちょっと待って!いませんよ…田口さん」
皆で田口を探し始める。「田口さん、田口さ〜〜ん」
石川「もしかして、あの人自分だけ出口探して出て行ったんじゃ…」
皆それに気づきますます必死に田口を探す。
「田口ー!田口ー!おーい、おーい、返事しろよーー」
そこで誰かが何かを見つける。
宗介「どうした?いたのかよ」
「死んでる…田口さん死んでます」
舞台左の段の中断で仰向けになり鼻もしくは口から血を流して死んでいる田口。
皆、田口の所へ集まってくる。全員ショックでボーゼンとする。
この頃からドンドンという音楽がずっと流れ始める。
宗介?「このザマだよ。おい!お偉いさん達よぉ、俺たち、どうしたらいいんだよ、なあ教えてくれよ。頼みますよ、俺たちの頭じゃいくら考えても答えが出ないんですよ。あんたら毎日小難しい事いじくり回してたんだろ?何とかなるよな?おい!なんとかいってくれよーー‼︎‼︎」と叫びながらシクシクと泣き始める。
棚橋?「あの〜」
宗介 「なんだよ!」
棚橋「なんか音がして…」
宗介 「だから何のおとだよ!」と怒鳴ったが 棚橋が怖じけたので 優しく「何の音か話してみな」
棚橋 客席から見て右の方を指差し 「あそこ…コンクリートが剥げてトタンが覗いてますよね。最初みんなで出口を探した時に気が付いたんですけど、もしかしたらそこ、向こうが空洞になってるんじゃ…叩いた時に音で判りますよね? もしかしたら向こうが通風口とか下水道とか………」
すると皆が壁に向かって行き確認しだす。
成俊 「あー!本当だー‼︎」
宗介 「なんで今まで黙ってたんだよ‼︎ おい!鉄でも何でも叩くもん持ってこい‼︎」
そして皆が壁を思いっきり叩き出し、金属を打ちつける激しい音が響く。しかし壁はビクともしない。
その時、嶋田が「どけ」と皆の間に割り込んできて、不気味な声を上げながらドアを開けようと力を込めた。
すると壁に隙間が開き、皆が「おーー開いたーーー!」
と喜ぶのもつかの間、大きな鉄板のドアは突然前に倒れ、そこには白衣を着た常川氏が立っていた。
自意識過剰で自己顕示欲の強いで自己中な常川は、この製薬会社研究所の独裁者であり、ネズミでは満足出来ず、その辺の人間をマウスに実験を楽しむ。ふと、大人になったゼラを想像した。
常川 「おや? 逃げ足が早いねウロキ君。おやおや貴重な水を粗末に扱っちゃ………( 怒鳴る) 困るね‼︎‼︎」
成俊? 「きさま、なぜ、なぜ俺たちをこんな目に合わせるんだ」
宗介? 「あの薬は何だ。あの薬の実験なのか? なあ、そうだろう!」
成俊 「 これが人体実験なら失敗だ、完全な失敗だ!強烈な頭痛、目眩、吐き気、悪寒、耳鳴り、幻覚作用。あんな思いをするなら死んだ方がマシだ!」
常川 「でも君は生きている」
成俊 「あんな薬で何を治そうっていうんだ!」
常川「君のような人間」
??「いい加減なことを言うな!貴様のしていることは拷問と何も変わりはしないじゃないか‼︎」
常川 「なるほど、拷問と言えるかも知れないね。しかしもしこれが拷問だとしたら、一滴も血を流さないんだから、とびっきり洗練された清潔な拷問だね」
成俊 「洗練されたぁ〜? 田口は死んだぞ!」
常川 「君たち無音の拷問室って言うのを知ってるかい? 君は知ってるかい?」
?? 「知るわけないさ。毎日穴ばかり掘ってたんだからね」皆から笑い声が上がる。
常川 「その拷問室はね、ただ音がしないだけなんだ」
その時 ズーーーーンという音響が入る
常川 「わかるかい? その無音の中に置かれた人間が真っ先に発見するのは自分の呼吸、体内に脈打つ血液の音なんだ。そして次には心臓をはじめとする体内の器官が発する音を発見してね、やがてそれは激しい騒音として彼の鼓膜に付き纏い始める。そして最後にはどうなると思う? 自分の脳の中枢からその音を消す機能を発見してね、いつかそれを停止することに成功する。その時彼の思考回路の中にはそれが死を意味するなんてことは無くなっちゃってるんだよね。そして後悔や動揺とは無縁にしっかり死んでいくんだよ。あの田口のようにね。おい! 田口を運べ」 と助手に命令する。
成俊 「俺は、俺は違うぞー!」
常川 「そーかねぇ。いや、そうだといいねぇ。ははははは、いやあ、そうだといいなぁ」
成俊 「ちくしょ〜!」
* 記憶にはないが、この瞬間何かが起こり、全員が眠ってしまう。
シーンとし、呼吸のような音響が入る。
常川「しばしの休息をとりたまえ。もう眠りの中で悪夢にうなされる事はない。ぐっすり寝て体力、精神力を回復させたまえ。そして10年間の眠りから目覚めたらまたお目にかかろう。その時君達を待っているのは悪夢ではなく、現実だ‼︎‼︎」
金属を叩くような音がしばらく続き消える。
〜これから10分間の休憩に入ります、と常川氏〜
スカンジナビア系のような音楽が始まり突然止む。
上野と常川とその助手たち、たくさんの大きな薬のカプセルがある。
上野 「すご〜く、えーと、まだ早い時間。つまり朝方かな〜。そう、仕事が終わった朝早くだ。すご〜く広い所で、えーと鳥がいっぱいの鳴いてて、その鳥っていうのがつまりカラスなんだ。だって真っ黒でカーカーカーカー鳴いてたから、あれは絶対カラスだよ。そう、すっごい大きいカラスで、それがえーっと30匹!いやもっといたな。100匹ぐらいかな。それでさ、ほら口にエサをくわえてて、そのエサっていうのが薬のカプセルなんだよ。それで口で薬の大きなカプセルくわえてね、カーカーカーカー鳴きながらカプセルをぜ〜〜んぶ持ってっちゃったんだよ。もしかしたらあれ、僕が一生懸命掘った薬かも知れないのにあいつらさぜーんぜん考えなくてバカみたいにカーカーカーカー鳴いてて。でもオレここにいて安心したよ。だってあいつさ、その薬のカプセルぜーんぶさ、ほらここに運んでたんだもんね。ほーら、ほらね」
上野仁さんはアインシュツルツェンデノイバウテンが大好き❤
この舞台セットもノイバウテン調なのでとても居心地が良いと言う。
常川「そりゃ夢か」
上野 「違うよ やだな、本当の話だよ。だいいちさ、オレいままでいっちども夢見たことないの」
皆爆笑する
上野 「ほんとだよ!ほんとだってば!」
常川「わかったわかった。しかしね上野くん、そのカプセルはカラスが運んできたんじゃなくて最初からここにあったんだ」
上野 「へーなーんだ、そうか、でもね、まあ、そんなことどっちだっていいんだよね。とにかく、ここにありさえすればいいんだよ。(笑)これ大きくていいよね(笑)オレこんなの欲しかったの」
常川 「そんなに気に入ったんならそれ、みんな君のもんにして構わないよ」
上野 「えーー!ほんとに?」
そして上野、棚橋を見つけて起こそうとする。
上野 「おーい、棚橋!おい、おい!」
常川 「ダメだよ、いくら呼んでもみんなには聞こえてないよ」
上野 「ね、もういいでしょ。あの頭に乗せてるへんなやつ取っても」
常川 「ダメだ、まだダメだ。彼らが君に追いつくまで」
上野 「どういうことよ」
常川 「つまり彼らより君の方が優れているということだよ」
上野 「へへへ そりゃーおかしいよ。オレなんか全然バカだって言われてるし、仕事場ではいっつも怒られてばっかしだし、みんなからボケとか言われてるし」
常川 「それで?」
上野 「いや、だから、オレだって褒められればそりゃあ嬉しいけど……変だよ、気持ち悪いよ………あの変な〜は何してるんだよ」
常川 「膿を吸い出してるんだよ」
上野 「ウミ? ね、膿ってどういうこと?」
常川 「例えば これ(これと言うものがどんな物だってか記憶に定かではありません)と彼らの区別しているところの何か」
上野 「な、何って、そんなの違うに決まってるじゃない。ははははは」
常川 「そろそろいこうか」
上野 「おい、そろそろいくってさ」
常川「まず、左から順にいこう」
ドーンという音楽が入る
常川 「おーきーろ!」
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